Cardiovascular Imaging(心臓血管の画像診断)

米山喜平

心臓CT

循環器医を目指す皆さん!画像(Cardiovascular Imaging)が好きだ!っていう人はいますが?「画像なんて学ぶよりは、カテーテル治療だ!とにかくカテーテル治療を学んで患者さんに助けてあげたい、立派な循環器医になりたい!だから画像を学ぶのは後にしょう!」って思っている人がほどんどだと思います。

私は、心臓CT画像を勉強するようになり、カテーテル治療が格段に上手になりました。なぜかというと、心臓CTの3D画像を見続けると、カテーテル室の2D画像が手に取るように分かるようになったからです。カテーテル治療の熟練医とそうでない医師の違いとはなんでしょうか?それはカテーテル室の2D画像を見る力の差です。熟練医は、2D画像をくるくる回して、本来みえないはずの心房や心室の位置、大動脈と冠動脈の位置関係、動脈硬化の形態を把握する力があります。だから、心臓CT画像を勉強するとかえってカテーテル治療が早く上手になります。

私は心臓CTが大好きです。その理由を解説したいと思います。一つ目は“つるっとした美しい画像”。0.3mmの高分解能のCT装置が表現する心臓は、まさに天下一品!まるで心臓をそのまま取り出したかのうな画像、よく見ると少しテカリが入り、有名な画家が描いたような画像。本物の心臓より本物っぽいところがたまりません。心電図、核医学、心エコーなどいろいろな検査がありますが、心臓CTほど心臓の形を表現する検査はありません。知っていますか?心臓って、顔形が一人一人違うように、一人一人心臓の形、血管の走行が違うんです。心臓CTを使うと“わっ!この心臓は縦長だ!この心臓の血管は蛇行してる!”正常の心臓の違いさえも簡単に分かってしまうようになります。それが心臓CTの魅力です。人間の顔がそれぞれ違うように、心臓の顔の違いが分かった瞬間、心臓専門医になったぁ〜!って思えるんです。

私が心臓CTを大好きな2つ目の理由は、“簡単に名医になれる画像”だからです。カテーテルの名医は冠動脈を見た瞬間に、タバコ吸っている人とか、コレステロールが高い人など病歴がわかってしまいます。心臓CTでも心臓みて病歴が分かるようになるんです。例えば、50歳なのに冠動脈の石灰化がいろいろな場所にあるとタバコ吸っている人だ!石灰化が少ないけどplaqueが局所にたくさんついているからこれはLDLコレステロールが高い人だ!冠動脈のどこをみてもびまん性にplaqueが付いている人は糖尿病だ!という感じです。カテーテルの前にもこんなカテーテルが合うな?とか、こんなサイズ治療が合うとか、心臓の中に血栓があるとか、カテーテル治療がシュミレーションできるんです。だからカテーテルが早く上手になるんです。シュミレーションがぴったり当たった瞬間、“やった!名医になれた!”って思えるんです。

私が心臓CTを大好きな3つ目の理由は、“新しい発見ができる画像”だからです。日本は世界一のCT王国です。最先端の医療が追加されるたびに得意のCT検査を行います。CTを勉強しておくと時代の流れにのることができます。流行に遅れるってちょっと恥ずかしいですよね。ファッションとか、言葉使いとか、流行に遅れてもいいかもしれないですが、心臓の分野はそうはいきません。心臓CTを勉強しておけば、心臓の先端治療についていけるんです。先端治療を行う名医は、心臓のたった数mmの違いを知りたいんです、だから、心臓CTを使うんです。それが先端治療の前のCT画像は宝の山。“この違いを知っているのは僕たちだけだ!”って思えるんです。新しい発見っんてちょっとわくわくしませんか?

だから私は心臓CTが大好きなんです。名医になって患者さんを助けたい人、カテーテル治療が早く上手になりたい人、心臓CTを武器にすればよいと思います。皆さんはどちらを選びますか?時間をかけて名医になりますか?CTを勉強して今すぐ名医になりますか?

心臓CT検査

心臓CT検査は入院しないで行う心臓の冠動脈の狭窄の診断の主力選手です。今までは入院して行う心臓カテーテル検査でしか分からなかった冠動脈の狭窄を観ることができます。

心臓カテーテル検査と比べより低侵襲で、体の負担が少ない検査です。

心臓CT検査でみつかった狭窄がある人は、後に心筋梗塞や突然死の危険が高いと言われています。異常が見つかった人は、心臓カテーテル検査、運動負荷試験、心臓MRI検査を受けて、最適な治療法を選択してください。

また心臓CT検査は、心臓の弁、心筋、心膜のほか、必要に応じて大動脈、肺をみることもできるので、心筋疾患、心臓腫瘍、大動脈瘤、大動脈解離、肺血栓塞栓症などの胸痛の鑑別診断にも役立ちます。

当院ではToshiba社320列同時撮影マルチスライスCT装置を用いて胸痛や動脈硬化の診断を行っています。

心臓CT撮像時の工夫

心臓の動きが激しい場合、せっかくの心臓の写真がぶれてしまいます。そこで、β遮断薬という薬を使って心臓の心拍数を低下させます。また、Toshiba社制の技術と当院の画像のスペシャリストが心臓の止まっている瞬間の画像を見つけ出し画像を作成します。心臓CT検査中にスパズムが起きますと動脈硬化がないのに、動脈硬化があるように見えてしまいます。これを防ぐために硝酸剤(ニトロ)を投与して血管を最大限拡張して心臓CT検査を施行しています。

心臓CT検査を受けることが望ましい患者様
  • 健康診断で心電図異常を指摘された
  • 狭心症を疑われた
  • 心筋梗塞を疑われた
  • 心エコーで心臓の収縮が悪いと言われた
  • 心不全と診断された
以下の患者様は心臓CT検査を受けることができません。
  • 腎臓の機能の悪い患者様
  • 気管支喘息の患者様
  • 造影剤にアレルギーのある患者様
  • 妊娠の可能性がある患者様
  • 担当医師が検査施行困難と判断した場合

注)20秒息を止められない患者様、心房細動のような不整脈を持っている患者様は画像をうまくとることができないため、診断制度が低下します。

心臓CT検査にかかる費用

33000円前後かかりますが、保険が適応されます。1割から3割負担で3300円から1万前後です。保健が適応したからといっても大きな負担だと思います。しかし、心臓CT検査を行うだけで、心疾患の中でも一般的な心筋梗塞や心不全のリスクを軽減できるのは大きな事といえます。心臓CT検査は完全予約制です。検査は月曜日から金曜日の終日行われています。

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