不整脈治療の新たなツール

クライオアブレーション (冷凍凝固アブレーション)

2016年3月より当院では心房細動に対して高周波カテーテルアブレーション に加え、クライオアブレーションを行っております。クライオアブレーションとは、液体窒素を用いたバルーンテクノロジーであり、高周波による焼灼ではなく冷凍凝固壊死を心房細動の原因である肺静脈入口部へ行う治療法です。4本の肺静脈に各1本あたり約3分の冷凍凝固を行うのみで心房細動をコントロール可能となる手術であり、手術時間が短く、患者さんへの負担も軽減しております。
またクライオアブレーションは、不整脈専門医教育施設において施行可能であり、限られた施設でのみ可能となっております。

クライオアブレーション

リードレスペースメーカ

2017年9月より当院では従来のリードを用いたペースメーカと異なるリードレスペースメーカの植込み術を開始しております。このリードレスペースメーカは、重さ1.75g、1ccという非常に小さいペースメーカであり、従来の皮下に植込みするのではなく、カテーテルを用いて心臓内に直接留置します。そのため前胸部の皮下ポケットやリードに関連する合併症がなくなります。また軽量化されていますが、電池寿命は最長12年であり、さらにMRI検査も可能となっています。ただしこのペースメーカは全ての患者さんに適応となるわけではなく、患者さんの不整脈の病状に合わせ従来のペースメーカ治療を行うこともあります。

リードレスペースメーカ

皮下植込型除細動器(S-ICD)

2016年から使用可能となった完全皮下植込型除細動器(S-ICD)を当院においても行っております。除細動器とは、心臓突然死を及ぼす心室性不整脈に対して迅速に電気的除細動(電気ショック)を行い、正常の心拍に戻すための機器です。従来は、心臓に直接リードを留置し、心室性不整脈を診断し、電気的除細動を行っていました。このS-ICDは、心臓に直接留置せず、胸壁に植込んだリードと左側胸部に植込んだ本体で心臓を監視し、必要時電気的除細動を行う機器です。直接心臓に留置しないため、全身感染症にならず、またリード損傷などの合併症も稀です。

従来のICD(左図)と S-ICD(右図)
従来のICD(左図)と S-ICD(右図)

文責 循環器内科 高野誠
2018/1/29

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