聖マリアンナ医科大学 循環器内科

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コトバ医療

米山喜平

聖マリアンナ医大循環器内科は、お薬や手術といった医療に加えて、“コトバ医療”を発展させていこうと2017年“コトバ医療”の活動をスタートしました。

まず、コトバ医療の説明をしたいと思います。医療の本質とは、人と人との関わり合いといって否定する方はいないと思います。今回我々は、言葉を用いて人と人の関わり合いを良好にすることを思いつき、“コトバ医療”という言葉を作りました。コトバ医療とは、相手を幸せにしようとする言葉や態度のことです。

例えば、心臓治療の主役は、お薬やカテーテル、ペースメーカー、弁置換術などの手術などです。しかし、その治療効果を最大限に得るには、医師と患者の関わり合いが大切です。このように医療は、適切に言葉を使うことが欠かすことのできないものです。

患者さんに病状を説明し、薬や手術以外にも治療ができます。たとえば、塩分制限は患者さんに説明をして、患者さんが実行すれば、患者さんが改善していきます。塩分制限以外にも、運動や睡眠などの生活指導も、言葉で行われます。言葉で患者さんの行動変容を起こすことができます。つまり、言葉は誰にでもできる治療(薬)でもあるのです。

コトバ医療は大きく分けて3つの概念があります。

① コトバ医療が患者さんの薬になる(病院内スタッフと患者)

医師がいくら説明しても、患者さんが理解してもらえないと意味がありません。例えば、医師は患者さんに沢山の説明を説明します。一方で、患者さんは沢山の情報は頭に残りにくく、結果として医師が説明しても、患者さんの行動変容(薬)まで至りません。”説明した”と”患者さんに通じた”は違うということです。これを解決するために我々は、患者さんの携帯電話に毎日メッセージを送ったらどうか?と考えました。その根拠は、新しい知識を得るには、反復、繰り返しが必要であるからです。また、簡単な言葉を使ってメッセージを送ることで、患者さんに伝わりやすくなります。患者さんは、病院から送られる毎日のメッセージを読んで、復習することができ、健康的な生活が送れるのです(特許出願:特願2017-150402)。このようにコトバ医療とは、患者さんを幸せにしようとする言葉や態度のことです。

② コトバ医療が病院の薬になる(病院内スタッフ間の関わりを良くする)

コトバ医療は、患者さんと医師だけではありません。医師、看護師、薬剤師、栄養士、理学療法士、臨床工学士、メディカルコーディネーター、事務など、様々な職種の人が病院で働いています。コトバ医療は、病院内のスタッフ間の関わりを良くする言葉や態度にも応用できます。例えば、病院内のスタッフ間での関わりを良くすることで適切な医療を提供できますが、一方で、スタッフ間の関係が悪ければ、医療の質を保つのが難しいかもしれません。ですから、適切な言葉や態度で病院内スタッフ間の関わりを良くする方法を学ぶことが必要です。それがコトバ医療です。また、日常臨床で気付いた点や報告、医療スタッフ間に伝えることもコトバ医療です。学会のプレゼンテーションや論文発表は、科学として、後世に知識や経験を伝えるものです。コトバ医療は、学会のプレゼンテーション方法、医学論文の書き方も学んでいこうと思います。

③ コトバ医療が社会の薬(医療から社会を改善させる)

医師が患者さんにかけるコトバは、患者さまを通り抜け、その家族に伝わります。
たとえば、患者さんに行う生活習慣病の治療は奥さんにも伝わります。心臓病がない奥さんが、生活習慣病に気をつけた生活を送れば、心臓病の予防になります。さらに この夫婦の予防法がその子供に伝わります。つまり、医師がかけるコトバは、患者さんに限定されず患者さんを“飛び越えます”。実は、言葉の力はこれだけはありません。言葉は“時空” を超えます。坂本龍馬の言葉、孔子の言葉は、まさに、今も時空を超えた言葉です。言葉は今も私たちの中に存在し続けます。だからこそ、我々の言葉が、患者さんからその家族に伝わり、次世代の子供に受け継ぐことができ、社会が健康に改善していくのです。

現在、インターネットで“コトバ医療”を検索してもゼロ件です。我々こそ、言葉を勉強する必要があるのだと思いました。だから我々は“コトバ医療”を勧めるのです。