聖マリアンナ医科大学 循環器内科 

〒216-8511 神奈川県川崎市宮前区菅生 2-16-1

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診療・検査のご案内

失神

はじめに

失神とは血圧が異常に低下するなどの理由で、脳全体の血流が一時的に低下するために引き起こされる意識消失の事を言います。通常、数秒から数分以内に後遺症なく回復します。一般には「気絶」、「気を失う」、「脳貧血」と呼ばれる症状です。脳血流の低下の程度により様々な症状が出現し、程度の強い患者様では意識消失後に痙攣様の症状を起こす方もいらっしゃいます。血流の低下が強くない患者様では「前失神」と呼ばれ、意識があっても「ふらふらする」、「目の前が一瞬真っ暗になる」等の症状となります。 1000人の人口に対し1年間に約6人の方が失神を発症します。多くの方が、自律神経の一時的な障害による神経反射性失神(神経調節性失神)など、その後の寿命に影響ない危険性の低い失神と言われています。しかし、心臓の病気(特に不整脈)が原因の心原性失神が含まれています。この心原性失神の有無はその後の寿命や心臓病の発症と関係する危険性の高い失神のため、早期の診断および早期の治療が必要となります。また、危険性の低い失神であっても「失神を繰り返される方」、「失神時にケガをされてしまう方」、「失神の経験が一度だけでも不安のため生活に制限がかかってしまう方」に対しても危険性の高い失神と同様に診断・治療が必要となります。失神は一時的な症状で、回復後には症状がないことや、失神の原因疾患が多岐にわたるため(表1)、従来の診療方法では失神の原因を見つける事が難しく、失神を診療する診療科もあいまいとなっています。そのため、受診される患者様やご紹介いただく医師の方も混乱する事がしばしば見受けられます。イタリアを中心にしたヨーロッパでは失神診療部門(Syncope Unit)があり、失神診療の中心的な役割を担っています。多くの失神診断部門(Syncope Unit)は不整脈診療の経験が深い循環器内科医により運営されており、その有用性が報告されています。日本では全国的に失神診療を専門とする医師の数は少なく、失神診療部門(Syncope Unit)は大学病院を含めても非常に少ないものとなっています。当院では1『失神(一過性意識消失)患者様の受診先を明確にする』 2『失神患者様に適切かつ効率的な診療を行い、診断率を向上させ、再発率を低下させる』の2つを目的に2012年4月より『失神外来』を開始させていただきました。

表1

診療内容

失神外来は「心臓の病気」・「血管の病気」を専門とする循環器内科外来のなかで運営されています。ただ、失神の原因は多岐にわたり原因の予想が難しいため、循環器疾患以外を原因とする「失神」、「気絶」、「一過性意識消失」、「意識消失に至らなくて目の前が暗くなり倒れそうになった(前失神)」などのすべての一過性意識消失患者様の診療をさせていただきます。一般的には「脳貧血」と言われる自律神経を介する「神経反射性失神」(神経調節性失神・血管迷走神経性失神)の患者様の診断・治療も失神外来にて行わせていただいています。診察の結果、一過性意識消失の原因が他の診療科の病気(てんかん、低血糖発作、ヒステリー等)が疑われる場合、該当診療科へ受診していただきます。

診察の流れ

かかりつけの診療所などの医療機関で、他の病気の治療をされている患者様や失神・気絶にて他の医療機関にて診療を受けられている患者様は、その医療機関より診療情報提供書(紹介状)を作成していただき、地域連携室を通して、予約をしていただければ、より円滑に診療が行えます。受診前に、かかりつけ医療機関の医師と相談してください。かかりつけ医療機関がなく、失神・気絶のために受診される患者様は、循環器内科の初診外来を受診してください。診断が確定されており、治療が開始されても再発を繰り返すような患者様も対応可能です。かかりつけ医療機関の医師と相談の上受診してください。 初診の時は循環器内科の失神外来の受診希望を伝えてください。 *外来担当日でも学会等のため不在のこともありますので、予約がない場合は電話にて確認の上受診してください。
【外来】
外来での流れについてご説明します。失神外来では多くの失神患者様の安全かつ迅速に行うためにヨーロッパ心臓病学会(ESC)および日本循環器学会(JCS)のガイドラインに準拠した診療を心掛けています。外来では失神の危険性(リスク評価)を判断し、危険性に応じて診療を進めていきます。危険性の高い患者様では早期の入院治療を進めさせていただくこともあります。
  • 問診:

    失神には前駆症状と呼ばれる前触れを伴う患者様がいらっしゃいます。例えば、心臓の病気が原因では「胸痛」、自律神経性を介する反射失神(神経調節性失神・血管迷走神経性失神)では「腹部症状・吐き気」「冷や汗」などです。また、失神前の行動や失神の頻度も診断に結びつきます。そのため、前記の状況について詳しく伺います。初診の場合、問診票をお渡しすることもありますので、ご記入ください。

    診察により起立時の血圧の低下、心疾患の有無やその他の異常を確認します。
  • 心電図:
    心疾患・不整脈の有無を簡便に確認できます。
  • 採血・尿検査
    貧血などの失神原因や不整脈の原因となる電解質(ナトリウム、カリウムなど)の異常を確認します。

その結果で外来での予約検査を行います。多く行われる検査は以下の通りです。

  • ホルター心電図:
    通常24時間の心電図を記録します。入院は必要ありませんが、2日連続の来院が必要です。無症状の不整脈の診断や失神時の心電図記録を確認する事で、診断の重要な情報が得られます。
  • 運動負荷心電図:
    ベルトコンベアーの上を走っていただき心臓に負担をかけて心電図確認します。狭心症の確認や運動誘発性の不整脈の診断に有効です。
  • 心臓超音波検査:
    超音波を使い、心臓の動き・心臓弁膜症の有無等を確認します。
  • ヘッドアップティルト試験:(Head up tilt test)
    自律神経性を介する反射性失神(神経調節性失神・血管迷走神経性失神)を再現する検査です。傾斜のかかるベッドの上で検査を行います。薬剤を使用し失神が起こりやすい状況を作る場合もあります。診断及び治療方法の選択に関して必要な情報が得られます. 日本では一般的ではありませんが、血圧の変化をより正確に確認できる特殊な機器を使用して行います。高齢な方や危険性が高い患者様は入院で行いいます。通常24時間の心電図を記録します。入院は必要ありませんが、2日連続の来院が必要です。無症状の不整脈の診断や失神時の心電図記録を確認する事で、診断の重要な情報が得られます。

他にも患者様に応じた検査を行い、結果により入院などの今後の診療方法を検討します。

【入院】
外来にて原因が診断できない場合や大きな検査が必要な場合、入院による診療を行います。また、原因の病気を治療するため入院していただく場合があります。 入院で行う主な検査は以下の通りです。疑われる病気により違います。
  • 心臓電気生理学的検査:
    徐脈性不整脈および頻脈性不整脈の有無を確認します。1-2時間程度の検査ですが、電極カテーテルというものを体内に挿入して行うため、血管造影室で行います。
  • 心臓カテーテル検査:
    冠れん縮性狭心症も含めた虚血性心疾患(狭心症等)の評価及び弁膜症の評価等を行います。こちらの検査も1-2時間程度の検査で、カテーテルと言われる細い管を体内に挿入するため血管造影室で行います。
  • 植え込み型ループ心電計(ILR- Implantable Loop Recorder):
    失神時の心電図を記録するために、左胸部の皮下に「植え込み型ループ心電計」を植え込みます。大きさは約6×2×1cm程度のものです(市販のライターやUSBメモリースティック程度の大きさです)。約3年間の寿命があり、原因のわからない失神には最も有効な診断方法です。ペースメーカーとは違い、治療効果はありません。失神は起こりますが、失神時の心電図記録があれば診断には非常に有用です。長期的には80%程度の診断率があると報告されており、「植え込み型ループ心電計」の植え込み前に、適切な評価を行えば安全性が高い事も証明されています。 結果やその後の治療内容により延長する場合がありますが、検査入院の場合、通常3日の入院になります。
循環器疾患・心臓疾患の一般的な検査は「診療・検査のご案内」に詳しい説明があります。
【治療】
失神(気絶)の原因が診断されたあとは、原因の病気に応じた治療を行います。一般的な失神の原因と治療の一部を簡単に説明します。
    • 起立性低血圧:
      生活指導により失神の予防を中心に行います。
    • 自律神経性の失神(神経調節性失神):
      生活指導および前駆症状出現時の回避方法の説明実施。失神の回数が多い一部の患者様にはペースメーカーを使用する場合もあります。内服治療を行う事は非常に少なくなっています。
    • 心臓病に関与した失神(心原性失神・不整脈性失神):
      必要に応じて、徐脈性不整脈に対してはペースメーカー治療を行い、頻脈性不整脈に対してはカテーテルアブレーションや植え込み型除細動器の植え込み、内服治療を行います。他の心臓の病気に対しては病態に応じ適切な治療を行います。当科の「診療・検査のご案内」にて循環器疾患の治療に関しては詳しく書いてありますのでご参照ください。
失神・気絶の場合、10%程度の方が原因の病気が診断できないと言われています。入院を含めた検査でも原因が診断できない場合があります。2012年度と2013年度に当外来を受診された患者様は200人で、診療を継続された患者様の診断率は約90%でした。診断がつかない患者様の多くが、頻度が少ないリスクの低い失神でした。外来検査のみで可能な患者様は約2ケ月で診断がついていますが、入院が必要な患者様では診断までに数か月必要です(図1、図2)。

表2

表3

研究

現在失神の診断・治療については不明な点も多く、海外の施設との共同研究も含め、幅広く行っています。また、失神専門の診断部門が本邦では非常に少ないため、診療内容等を学会等に報告しています。研究は当大学の倫理指針に従って研究を行っています。研究にご参加いただく際は、こちらから説明させていただきますので、よろしくお願いします。

専門外来

失神外来(金曜日 午後 担当医師:古川 俊行 講師)

初診の患者様は随時初診外来にて受け付けております。 ご不明な点は、内科外来にお問い合わせください。

外来担当表

循環器内科 外来担当表

こちらからご確認ください。